大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和25年(う)2608号 判決

原判決挙示の証拠を総合すれば、原判示第二の(四)の事実、即ち被告人が昭和二十四年九月二十七日頃自宅で阿片チンキ約二二、五グラム所持していた事実は優にこれを認めることができる。

麻薬取締法第三条第五十七条第一項の麻薬所持罪の成立には、客観的な事実支配の状態と右事実の認識を必要とすることは所論のとおりであり、原審第二回公判調書中の被告人の供述記載及び原審証人被告人の妻竹内茂樹の供述記載によれば以前は阿片チンキ、ヘロインは常備薬として薬局に備え付けねばならなかつたものであること、昭和十九年七、八月横浜の保土ケ谷から高崎へ疎開したとき本件麻薬を含む薬品を箪笥の抽斗に入れて荷造りして送り、疎開先では荷造りを解かず、昭和二十四年四月現住所へ移つたとき薬品の荷物を同証人と子供とでほどいたが、このときは阿片チンキ、ヘロインがあつたことに気付かず、同年暮頃警察の人が家の中を調べたとき二階の箪笥の中から阿片チンキが出てきたこと、被告人はこのとき階下におり、二階を調べられては困るというような態度は見られなかつたことが認められ、従つて、被告人の右麻薬の入手経路及び右麻薬が警察職員に発見された経過が所論のとおりであることは認められるが、右事実関係によれば、被告人は右麻薬を薬局の常備用として所持していて疎開の際荷造して送り、更に疎開先から他の荷物と共に現住所に送り、その間右麻薬につき被告人に事実支配のあつたことはいうまでもなく、右事実支配の認識にも欠くるところがなかつたものと認められるのである。即ち、右麻薬を入手し所持するに至つた当初において、右事実支配の認識がある限りは、一時麻薬の存在を忘却したとしても、なお社会通念上右麻薬所持の認識あるものと解すべきであるからである。

従て、原審には何ら事実誤認の点なく、論旨は理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!